WDAI-FOCUS Vol.3 英文抄読-デジタル新時代"の風

最終更新: 2019年6月3日

2018年11月1日発行 Academy News Vol.3

WDAI-TOPIX & FOCUS (英文抄読)

小林真理子 (WDAI第6回定例会実行委員長,汐田総合病院)



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デジタル技術が歯科補綴学分野にも革新的なムーブメントを起こしたことで,インプラントを主軸とした診療も,包括的に”デジタル新時代”に突入しました.今回のWDAI最新トピックスは,システマティックレビュー,ITIコンセンサス2018を抄読し,最新のデジタル

テクノロジー,特にスキャン技術がもたらす歯科診療の現状と展望を紐解いてみたいと思います.

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フェイシャル,骨格,口腔内組織スキャンのためのデジタルテクノロジーの精度:システマティックレビュー

(Bohner L., et. al., Accuracy of digital technologies for the scanning of facial, skeletal, and intraoral tissues: A systematic review. J Prosthet Dent. 2018 Jul 13. [Epub ahead of print])

目的: 口腔機能回復の成功には,バーチャルイメージを用いたデジタルテクノロジーの精度が重要なポイントとなる.バーチャルイメージを構築するのに必要なデータはスキャナーから生成され,デジタルベースの精度はスキャナーに依存する事が報告されている.本システマティックレビューの目的はデジタルテクノロジーを用いた顔貌,骨格,そして口腔内組織の再現性の精度から,”仮想患者はどれだけ正確なのか”を評価することである.

材料と方法: この調査はシステマティックレビュー,メタアナリシス(PRISMA)ガイドラインの優先レポーティング項目に基づいて,国際登録No, 42017060836.2を行なった.2017年4月から6月までの4つのデータベース(PubMed:n=1210, Scopus: n=744, Cochrane: n=564, ScienceDirect: n=378)に加え非査読文献(Non-peer-reviewed: n=7)から,硬組織及び軟組織のスキャンによって得られた3D画像の寸法精度を評価する研究を検索し,バイアス評価ツールを実施した.

結果: 総数2093の文献から183件がスクリーニングされ,そのうち34件がレビューの対象となった.ほとんどの研究はIn Vitroであり,画像分析がデジタルベースの方法により正当化されていた.顔貌スキャンの精度評価は,デジタル立体写真測定法及びインターフェログラム(分光特性想定装置)の精度を比較していた.骨格イメージングはほとんどがCBCTを用いており,写真測量,磁気共鳴イメージング,光造形などの技術を用いて評価された.歯列弓は口腔内スキャナー,印象採得によって提供された.完全無歯顎のモデルをスキャンしたのは1つだけで,インプラントについては全てフルアーチスキャンが行われていた.顔貌のスキャンは140-1330μmの範囲の偏差値を示したが,3D再構成した顎骨は106-760μmの範囲であった.口腔内スキャナーとラボスキャナーによる歯列弓のスキャンは17-378μmまでの範囲であった.無歯顎では44.1-591μm,無歯顎のインプラントは19.32-112μmの範囲を示した.

結論: 一般的にはほとんどのスキャナーが,臨床的に使用可能な精度値を示したが,同じスキャン組織の検討をしたところ,スキャン技術,オブジェクト形状,スキャニングストラテジーの影響を確実に反映するものであった.インプラントで認められる不一致やばらつきは無歯顎モデルでの評価で認められた.可動粘膜及び基準となるランドマークの欠如は相違をもたらす.特定のアプリケーションで精度は正確と報告があるものの,虚像と物理的構造間の偏差が臨床的に失敗を招くかは依然として不透明であり,無歯顎のスキャンでは臨床上の課題が残されている.


ITI コンセンサス 2018 (Group5:デジタルテクノロジー)

(Daniel W., et. al., Group 5 ITI Consensus Report: Digital technologies. Clin Oral Implants Res. 2018 Oct.17. 29(S16). [Epub ahead of print])

第6回ITIコンセンサス会議において,グループ5ではデジタルテクノロジーの計測,精度にフォーカスを当てレビューをした.この中でPAPER2ではデジタルインプレッションについて評価している.

コンセンサス声明

1)口腔内スキャナーを用いた単一,数歯欠損のインプラントデジタル印

象の精度は,従来のインプラント印象の精度に匹敵する.

2)インプラント間距離が離れると,デジタル印象は悪影響を受ける.

3)スキャンプロトコルは無歯顎におけるインプラントデジタル印象の精度に重要な影響を及ぼす.

4)無歯顎のインプラントデジタル印象では,異なるスキャナーを比較す

ると精度に誤差が出る.

臨床上の推奨事項: 1修復に1回ごとのスキャンを推奨する.また正確にスキャンするため,スキャンボディーを使用する.インプラント間が長い場合と無歯顎は,デジタル印象はまだ臨床的に推奨されない.


将来のための研究の提言: ソフトのバージョンにより同じハードウェアで精度が異なる可能性がある.バージョンアップは早く,研究が追いつかない.従って,標準化された条件を考慮し研究デザインを確立する必要があり,バージョンアップにはスキャンプロトコルを用いて信頼できるデータベースを作成することが重要である.臨床では従来のワークフローと比較して予測可能で信頼性の高い手順での研究が必要である.ジオメトリ(グラフィカルオブジェクト),寸法精度,材質,表面性状の点で異なる口腔内スキャンボディーの精度に関する文献がない.矯正,部分欠損,無歯顎での複数のインプラント修復に関し,異なるスキャンプロトコルを開発し,比較すべきである.また,スキャンボディー間の距離,顎堤の長さや形状,粘膜形態のデジタル印象の精度に及ぼす影響を検討する必要がある.


レビューとITIコンセンサスから,読者の考察

現在の歯学分野におけるデジタル精度は,データ収集技術の上に成立している.精度評価はレビューやコンセンサスにもあるように,臨床上問題は指摘されていないが,無歯顎ではランドマークの欠如のため課題が残されている.デンチャーの製作には,床基底面と粘膜面の再現性に問題があるものの,フレームワークのCAD/CAM製作や,コピーデンチャー,義歯修理といった活用法では期待できるテクノロジーと言える.スキャン技術やストラテジーの影響を受けるという評価から,歯科医師側の撮影技術,技工士のバーチャルデザインを磨くサポートは急務と考えられる.テクノロジーに関して言えば,加速的に進化するソフトのアップデートは,確実に各技術のフュージョンをもたらし,歯学に包括的な革命を起してい

くだろう.

経済学者のロバート・ゴードンは第3次産業革命と比較し,第4次デジタル産業革命は,生活に変化を引き起こす力は限られていると評価した.20世紀のデジタル技術は,成長率を押し上げるのに時間がかかったからだ.しかしトランジスターをはんだ付けし,一部屋を占拠し膨大なエネルギーを消費していたコンピューターは,21世紀に入るとポケットに収まり電話ができるスーパーコンピュータへと進化した.PCと電話の融合はIoT技術を加速させ,デジタルのポテンシャルを引き出した.WEF世界経済フォーラムでも”Digital innovation needs human ingenuity”と述べている.2018年10月スイス・ジュネーブでWEFが発表した『世界競争力報告』によると,日本は総合評価を5位まで上げた.長寿国を背景に医療

分野が最高評を受け,IoTをはじめとする第4次産業革命の活用は,競争力を決める重要な要素であったと分析したのだ.

デジタル技術の応用は,医療分野における日本の未来に必須であり,今後,各テクノロジーの規格化と技術拡大,一般医療者への普及という課題を経て,国民の健康増進に寄与するものとなるであろう.2019年WDAI第6回定例会では,我が国で最も光学印象(3Shape)のケースを持つ田中譲治先生から,すでに応用が始まっているデジタル新時代の風をお届けする.

(第6回定例会 詳細は次頁,または wdai.jp へ)


表1: http://www3.weforum.org/docs/GCR2018/05FullReportTheGlobalCompetitivenessReport2018.pdf


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