WDAI-TOPIX 1~2. 口腔内スキャナー
2018年4月1日掲載 Academy-News Vol.1-2
WDAI TOPIX
テーマ:口腔内スキャナー
解説:渥美美穂子先生 (WDAI副会長,MAデンタルクリニック)

口腔内スキャナー:光学印象採得用装置として直接患者の口腔内をスキャニングすることによって,従来のシリコーンなどを用いた印象や石膏模型にかわる印象採得を行うものである.嘔吐反射がある患者様は「早くにこの装置があれば,もっと楽だったわ」と言われました.私たち歯科医師も,スキャニングにある程度の習熟を必要としますが,慣れてくるとすべての印象操作が口腔内スキャナーでできないものかと考えるようになります.

口腔内のスキャニングを印象ととらえた場合,導入して開始するまでは従来法の印象で精度の高い印象採得が可能なスキルがあるのだから,かえって面倒に感じましたが,実際に応用していくと, スキャニングで印象採得すると同時にインターネットを介してラボにオーダーまで終了と考えると,精密な石膏注入に神経をとがらせることや,技工発注,送付の手間などを軽減することができるし,何といっても再印象に陥った時のストレスがなくなります. 支台歯形成~2重圧排,1次印象による加圧と,2次ウォッシュシリコンの量を決めるスペースの調整や遁路設置などいくつものハードルを越えた後にたどり着いたシリコン印象が失敗に終わった時, 振出しに戻る的な気力の萎え,どこにもぶつけようのない怒りと, ため息は歯科医師ならだれでも味わったことのある場面ですが, 口腔内スキャナーでは追加でスキャニングするだけなので,大きくストレスは軽減します.また,患者はリアルタイムの画像に驚嘆するとともに,自分のスマホなどで,その画像を試し撮りして帰られるような興味を示される方も多々おり,歯科医師と患者様とのコミュニケーションツールとしても大きな役割を果たしております.

携帯電話が世の中に導入されてある時点で,あっという間に今のような1人に一台以上の普及を果たしたように,歯科業界にあって,近い将来やはり,印象はこれにかわっていくのではないかという予感は十分にあります.最終的には保険診療にも導入されていくのではないかと期待がもたれるところです.世界的なビジネス調査レポートおよびコンサルティングサービスを提供する市場調査会社Transparency Market Research社の分析を以下に示します.
世界的に急速にデジタルスキャナーが普及することをレポートしております.

デジタル印象用スキャナーのマーケット予測2014-2020年
2013年における市場は54.4ミリオンUSD(約58億)だった.2020年までに178.9ミリオンUSD(約193億)が見込まれている.2014年~2020年における年平均成長率は17.1%である.ヨーロッパは2013年においてデジタル口腔内スキャナーマーケットの最大の寄与者であった.これは主にドイツやイタリアなどの国において高い比率でデジタルスキャナーが採用されたことによるものであった.アジアパシフィックは今後最も早いスピードでデジタル印象スキャナーが成長する市場であると見込まれている.アジアパシフィックにおける2014
年~2020年における年平均成長率は20.1%と予測されており,この地区における最大の寄与国は日本である.この成長は患者の快適さに焦点をおいた歯科治療への関心の高まりによるものである.中国,インド,韓国もデジタル印象スキャナーの価格が下降すれば,アジアパシフィック市場における主な寄与国となると考えられている.
渥美美穂子 D.D.S., Ph.D. 1992 神奈川歯科大学大学院博士課程修了 2003 神奈川歯科大学補綴科 インプラント科兼任勤務
2004 米国州立ミシガン大学留学 2008 神奈川歯科大学附属病院 インプラント科部門長
2012 神奈川歯科大学附属病院 インプラント科科長
2014 MAデンタルクリニック設立
日本口腔インプラント学会専門医 日本補綴歯科学会専門医・指導医 日本歯周病学会 American Academy ofPeriodontology WDAI副会長