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WDAI-Challenge! 要介護インプラント高齢者 "お口の自立"

更新日:2020年4月18日

2020年1月31日 WDAI Academy News より

2020年1月31日 WDAI Academy News より



ご紹介


全身疾患による後遺障害 によってインプラント患 者さんが要介 護となった時 、歯 科臨床家としてど の様な対応が 求められるのでしょうか? 今回、WDAIメンバーで汐田総合病院勤務の田中由美 (歯科衛生士)さん等は、この問題について第48回日本口腔インプラント学会学術大会(大阪)で発表しヒューフレディ賞を受賞しまし た。歯科衛生士さんが行った要介護から「自立」への􏰂チャレンジをご 紹介します。

(WDAI理事 汐田総合病院 小林真理子)


参照動画 (下) : 口腔ケアを始めよう (YouTube )https://youtu.be/S4UiPTRp3Zs



「要介護高齢者におけるインプラントケアと リハビリテーションの一工夫」

田中由美 (汐田総合病院 歯科・口腔外科 衛生士長)


WDAIの皆様には、謹んで新春のお祝いを申し上げ ます。またこの度はWDAIニュースレ􏰀ーへ寄稿す る機会を頂戴し、心より感謝申し上げます。 当院は、神奈川県横浜市にあります急性期・回復 期医療を主軸とする総合病院で、地区の拠点病院 の一つを担っております。全14診療科中、当歯 科・口腔外科には専門を持つ歯科医師が非常勤を 含め 6名 (口腔外科、歯科麻酔科、インプラント科 ほか)、歯科衛生士 7名 (日本歯科衛生士会認定衛生 士、日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士) が、 一般外来の診療に加え、口腔外科処置、摂食・嚥 下リハビリテーション、NSTなど病院ならではの 特殊性を生かした診療を行っています。 今回は脳出血の後遺障害で利き手交換を行った入 院患者のインプラントケアとリハビリテーション の2症例を学会発表致しましたが、要介護高齢者 におけるインプラントの口腔ケアは、介護側の負 担も大きく理想的環境を継続的に提供できない場 合があります。しかし不健康期に備えるシンプル な補綴形態への修正 “Back off”と辛抱強いリハ ビリテーションは「自立」への一対処法として有 用であることを皆で経験しました。また入院中の インプラント患者の中には意図的 に“Back off” せず、摂食・嚥下障害による胃瘻造設から、リハ ビリテーションで経口摂取が始まった方もいらっ しゃいます。この様な回復を励みに、今後も患者 や家族に寄り添い、病院歯科衛生士として先生方 や同僚,多職種と共に外来・入院患者の口腔衛生 管理に努めて参りたいと存じます。それでは僭越 ながら発表した2症例を供覧させて頂きます。


[症例1] 家族もケアしやすい口腔内環境 “ Back-off “と 継続的な口腔健康管理 患者は55歳、女性 。2008年 にインプラント上 部構造脱離を主訴に当院リハビリテーション科よ り併診依頼で受診。既往歴として左視床出血後遺 障害で右半身麻痺(利き手交換あり)、右側下肢切


断により車椅子での介助を必要としている( 要 介護3 ) 。県外で2000年ごろにインプラント 治療( 固定性補綴装置装着) が行われており、脱 離した上部構造は、複雑なデザインにより清掃 困難を起こしていた。セルフケアの自立を目標 に、補綴形態の問題と継続的な衛生管理の問題点に􏰂ームで取組んだ。当科歯科医師により患 者の希望を考慮して、固定性補綴装置がBack- offと清掃性を重視した形態で新製された(図 1) 。なお歯科衛生士からはプロビジョナルレ ストレーションの段階で、清掃性を本人と家族 に確認・指導し、設計上の問題が解消した上部 構造が装着されている。次に継続的な衛生管理 の問題に取り組むべく、動かない右手の代わり に利き手交換した左手でセルフケアの自立と、 家族へ介助方法の指導を開始した。本人には毛 先の断面がフラットな歯ブラシ、家族の口腔ケ アには二段植毛􏰀イプの歯ブラシと􏰀フトブラ シに絞って指導を行った。また本ケースでの勘所として、図2のナーシングケアの部分を患者 と家族に当てはめ、継続的な口腔衛生管理を 行った。初診から約10年、上部構造再製作から 約4年が経過し、ご家族と一 緒に口腔内環境を 維持することが出来ている。



[症例2] 義歯着脱訓練と口腔清掃の自立 患者は71歳、女性。2016年左視床出血にて当 院へ救急搬送され、脳神経外科及びリハビリ テーション科で処置された。当院NSTを通して 咀嚼機能向上を目的に当科へ受診。既往歴とし て、左視床出血による右半身麻痺( 要介護3 )、 失語症、構音障害、眼輪筋、口輪筋、鼻唇溝での右麻痺、舌運動は正常で あるものの挺舌は右に偏移 が認められた。



口腔内には 約10年前に埋 入されたイ ンプラントがあり、すでに 固定性から可撤性へ “ Back off ”が施され ていた( 図3) 。問題は、症 例1と同様に健側( 左手) に 利き手交換しており、一人 で義歯着脱ができない事ア􏰀ッ􏰂メント周囲の清掃が困難であ る事が 挙げられる。ア􏰀ッ 􏰂メントはLOCATOR® (Zest 社製、米国) が装着されており、一時的 に担当医は維持力をブルー( 0.68kg) からレッ ド( 0.45kg) へ下げ 、STと共に リハビリ テー ション、そして歯科的トレーニング着 脱訓練 は継続された。退院後の定期健診で LOCATOR®の維持力は元のブルーへ戻り、 現在インプラント、残存歯、義歯の管 理自立 は良好に経過している (図4)。


汐田総合病院 歯科・口腔外科 神奈川県横浜市鶴見区矢向1-6-20 045-574-1362



2020年1月31日発刊 WDAI Academy News より









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